2009-04-14
【ソマリア沖海賊】海自による護衛開始・海賊活動は
アデン湾からインド洋へ

政府は13日、海賊行為が頻発しているアフリカ・ソマリア沖への海上自衛隊の護衛艦派遣を決定し、海賊対処法案(海賊新法)も閣議決定した。しかし、海賊新法が成立するまでは武器使用に制約があるほか、その海賊新法も成立への見通しは立っていない。
記事本文の続き 派遣される護衛艦には哨戒ヘリ各2機を搭載。2隻の護衛艦が前方と後方から商船団を挟む形で、片道2日のアデン湾を護送する。海警行動は危害射撃を正当防衛、緊急避難時しか認めていないため、海賊船を哨戒ヘリで早期に発見し、接近をくい止めるための威嚇射撃が重要となる。

海警発令 武器使用に制約


 護衛艦が持つ速射砲や機関砲では破壊力が大きいため、部隊は船の左右に2台ずつ据えられた12・7ミリ機関銃で対処するが、急遽(きゅうきょ)対物狙撃銃を持ち込むことになった。威嚇射撃が外れて死傷者が出れば、隊員が法律違反で裁かれることになりかねないためだ。

ソマリア沖・アデン湾で海上自衛隊の護衛艦「さみだれ」が大音量で警告した小型船舶。小型船舶はイエメン国旗のような旗を付け、えい航したボートは転覆している(防衛省提供)


 新法が成立すれば、停船命令に従わず接近してくる海賊船に対し、危害射撃が可能となるが、それまでの間制約を抱えての任務が続くことになる。
 これまで自衛隊の海外派遣では武器の使用が正当防衛、緊急避難に限られてきたが、政府は今回、「海賊対策は警察活動」と仕分けした上で、「任務遂行のための武器使用」となる停船目的での危害射撃を初めて認めた。私的目的で略奪行為を行う海賊は憲法が交戦を禁じるテロリストなどの国に準ずる組織とは異なると判断したためだ。
 ただ、海賊と判断して危害射撃を加えた後に相手がテロリストだったと判明した場合、「政治的問題が生じないとはいえない」(政府筋)との指摘もある。「確実に海賊船と判断できない限り、停船目的射撃は慎む」(防衛省幹部)との声が漏れる。
 海賊新法をめぐる政府内の議論では、海賊対策にあたる他国艦船への補給などの国際貢献策が検討された。防衛省が主張した補給支援に加え、外務省は世界食糧計画(WFP)船の護送のためソマリア領海での活動を求めたが、「審議が混乱する」などの理由ですべて見送られた。


 新法成立のカギを握る民主党の鳩山由紀夫()幹事長は、海上警備行動の発令を批判。海賊新法について修正協議には含みを残したが、同党は法案への賛否を明らかにしておらず、新法成立の行方は不透明だ。(産経新聞)


 海賊対処法案のポイントは次の通り。
・海賊行為は、公海かわが国の領海で、暴行などをして、船舶を強取したり、船内の者を人質にして第三者に財物を要求するなどの行為。
・海賊行為をした者は無期か5年以上の懲役。そのほか、人を死亡させるなどの罪状に応じ死刑から3年以下の懲役。
・海賊行為には海上保安庁が対処。海上保安官は正当防衛、緊急避難で武器使用する場合のほか、海賊が制止に従わず海賊行為を継続し、停船させる手段が他にない場合に、合理的に必要な限度で武器使用できる。
・防衛相は首相の承認を得て、自衛隊に海賊対処を命じる。
・首相は(1)(自衛隊派遣の)承認(2)自衛隊の海賊対処行動が終了−したときは国会に報告。
・武器使用の規定は自衛官に準用する。

米国海軍艦艇から撮影したソマリア沖の海賊。AK47やその他の自動小銃、RPG-7などで武装している。

 政府は4日の与党海賊対策に関するプロジェクトチームの会合で、海賊対処法案(海賊新法)の骨子を提示、了承された。海賊船が保護対象の船舶に接近した段階で、停船させるための船体射撃を認め、これまで自衛隊の海外派遣で正当防衛、緊急避難に限られてきた武器使用基準を緩和した。海賊行為により人を死亡させた場合は死刑または無期懲役とする罰則規定も整備した。
記事本文の続き 骨子は、海賊行為の定義を私的目的で公海および日本領海で行われる(1)船舶強取(2)船舶内の財産・人の略奪(3)人質強要−と規定。民間船舶に著しく接近することや凶器を準備して船舶を航行させる行為も処罰対象に含め、5年以下の懲役を科す。保護対象はすべての船舶とした。 


 海賊への対処は海上保安庁が行い、海保で対応できない場合には防衛相が「海賊対処行動」を発令し自衛隊を出動させる。自衛隊出動には首相の承認が必要で、国会に部隊規模や装備、派遣期間などを報告することを義務付けた。
 武器使用基準について、自衛隊法に基づく海上警備行動では警察官職務執行法が準用され、危害射撃が正当防衛・緊急避難の場合に限られる。新法ではこれに加え、停船命令に従わずに海賊船が民間船舶に接近した場合は、海賊側の発砲がなくても停船目的での危害射撃を可能とした。また海賊対策にあたる他国艦艇への補給支援は新法に規定を設けず、見送った。

海賊対策で海上自衛隊も含めた各国海軍が派遣されているソマリア沖のアデン湾で、イエメン漁民が海賊と疑われて威嚇射撃を受けるなど海軍と海賊の板挟みとなり、「漁業が立ち行かない」と悲鳴を上げている。21日付のサウジアラビア紙アラブ・ニューズが伝えた。
 同紙によると、イエメンのハドラマウト州沿岸では約1万2000人が漁業に従事、主要な漁場は同国とソマリア中間海域で、海賊被害海域とも重なる。両国の漁師が乗り組むことが多く、海賊と誤認されて威嚇射撃を受け負傷者も出ているという。