2009-07-01
『本棚』

 朝日新聞夕刊の一面『人・脈・記』の新シリーズ「反逆の時を生きて」が先週から始まり、初日金曜日の記事の中の写真を見て、すぐに高野悦子だと分かった。そんなにファンでも無かったし、さほど強い印象を持っていた訳でも無いのに、写真だけですぐにフルネームを思い出したのはどうしてだか分からない。普段見ない物置の本棚を見たら高野悦子の『二十歳の原点』とその『序章』が並んで入っていた。
『ノート』との三部作だったと記事にはあるが、それは私の本棚からは見付からなかった。ル・クレジオの『調書』やギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』や高橋和己『我が心は石にあらず』高橋揆一郎『伸予』高橋三千綱『九月の空』等もいっしょに並んでいました。小川国夫や中上健次もあって、古井由吉の帯には何と「注目すべき新人」と書かれてありました。『伸予』も『九月の空』も「芥川賞受賞作」と帯にありました。ル・クレジオは先回のノーベル賞作家です。


 近頃世間では『1Q84』でもちきりですが、私は今度は6月19日に宮本輝の『骸骨ビルの庭』を買って来ました。ちょうど高野悦子が夕刊に出ていた日ですね。例によって奥付けには6月23日第一刷発行とあり、密かに「ウフフ」です。
宮本輝も村上春樹と並んで、少なくとも発売初日までに全単行本作品を買っています。
(輝の『優駿』と春樹の『アンダーグランド』だけを除いて)
 『1Q84』の場合は春樹にしては珍しくストーリーじみたものがあるサスペンス仕立てになってはいましたが、こちらの場合は何時もと同じで、コテコテの物語だけが沢山あると云うスタイルです。様々な登場人物(大体いつも結構沢山の人が登場します)のそれぞれの、これでもかと云うほどドロドロとした物語が語られると云うお定まりのパターンですが、さすがに宮本輝は語り口に安定感があります。宮本輝の物語は、ほとんどのストーリーが、その登場人物の口で語られて進行して行きます。
しゃあけんど大阪にはなんでこげん怪し気な人らばっか、何時でもぎょうさん居てはるんやろかと、ほんまにあきれてものも言えまへんがな。戦後のどさくさやドロドロなんて云うものは、何も関西の独占販売と云う訳でもおまへんやろが。
春樹も輝もどちらも出身は阪神ですし、年齢もほとんど同じですが、何故にこんなにも表現されるスタイルが違うのかと思う位に差があります。もつ煮込みとビーフストロガノフ位の差です。
 そう云えば高野悦子も立命館で、結局関西でしたね。昔の事で、もうほとんど思い出せませんけど、この人は明星チャルメラ位だったかな。特別美人と云う訳でも無い極めて真面目な女学生と云う所だろう。マジメ過ぎてフツウ過ぎた所がかえって不幸で当時の時代の空気の中で、彼女にとっての時代の物語を与えてしまったんでしょう。
その時代の空気で当時の私ですら「佐藤訪ベト反対デモ」をモチーフにした短編をいたずらで書いたりもしていたのを思い出しました。
幾ら何でも、薄紫の藤棚の下でアベマリアを歌ったりする程にはワルではなかったでしょう。
 日本の月探査衛星「かぐや」が、その使命を終えて月面に向けて次第にゆるやかに低空飛行をして着陸をして行く様をテレビでやっていました。
私のこの「コラム」には何の使命もありませんし、これまでに何の役にも立った事もありませんでしたが、そろそろその任務を終えて着陸をする頃かな、と云う気もしています。これまでこちらから一方的に送りつけてご迷惑をお掛けし続けて十数年にもなりますが、こう云うのももうぼちぼち終わりにした方がいいんじゃなかろうかと云う気がしています。


                                     
 2009.06.26.

長い間、ご苦労様でした。 息抜きに(私の)気が向いたら御投稿下さい。 変な病気を連れ合いにニュースを探して見えない目で細々と遣っています