2009-08-05
クリントン元米大統領が平壌到着、
記者解放交渉だけで終われば良いが?

北朝鮮の朝鮮中央放送と平壌放送は4日、ビル・クリントン元米大統領がこの日、平壌に到着したと伝えた。元大統領は、北朝鮮に拘束されている米国人女性記者2人の解放問題を協議する。今回の交渉が、対立局面にあった米朝関係を対話の方向へ転じさせるきっかけとなる可能性がある。
 空港では、楊亨燮(ヤンヒョンソプ)最高人民会議常任副委員長と金桂寛(キムゲグァン)外務次官が出迎え、子供がクリントン元大統領に花束を手渡した。中国国営新華社通信によると、元大統領は、記者団の質問に何も答えなかった。北朝鮮当局者も元大統領の訪朝の目的を明らかにしなかった。


 また、韓国の聯合ニュースは、クリントン元大統領は在任期間中(1993〜2001)に、北朝鮮との関係正常化に積極的だったことから、金(キム)正日(ジヨンイル)総書記と会談する可能性が高いと伝えている。

北朝鮮の金正日総書記、クリントン元米大統領


 米朝両国は、国連代表部を舞台にした「ニューヨーク・チャンネル」を通じ、女性記者の解放問題を協議してきた。北朝鮮側がクリントン元大統領や閣僚を平壌に送るように要求し、米国側は解放問題と核などの政治問題を切り離して処理するという方針を堅持しながらも、ハイレベルの特使の派遣には積極的な立場を示したという。韓国メディアによると、一行には米政府当局者は含まれていないという。
 1994年に北朝鮮をめぐる第1次核危機が起きた際、ジミー・カーター元米大統領が訪朝。対決姿勢を続けていた北朝鮮が米朝協議再開に応じるなど対話姿勢に転じており、今後の米朝関係に変化が現れるかどうかも注目される。

北朝鮮で拘束されている米国人女性記者の2人
 

拘束中の2人は、米国の「カレントTV」に所属する中国系のローラ・リンさんと韓国系のユナ・リーさん。中国に脱出した北朝鮮女性の生活などを取材していた今年3月半ば、中朝国境付近で北朝鮮側に捕らえられた。6月に北朝鮮の裁判所から労働教化刑12年の判決を受けている。

米ケーブルテレビ・カレントTV(サンフランシスコに本社)に所属する米国人女性記者ら2人が北朝鮮に拘束されてから4カ月が過ぎるにつれ、最近、米ワシントンDCでは、ビル・クリントン、ジミー・カーター大統領経験者らの名前が膾炙(かいしゃ)されている。

北朝鮮側が、平壌(ピョンヤン)を訪問し、釈放問題を解決する米国の特使として、2人の大統領経験者を希望しているということだ。ワシントンの消息筋は19日(現地時間)「北朝鮮が記者らの釈放問題について▽北朝鮮の法システムの認定▽遺憾の表明▽再発の防止−−とともに、適した特使としてクリントン、カーター氏らを名指した」とした後「拘束されている女性記者ローラ・リンさん(中国系)と同氏の家族の電話通話を通じ、間接に米政府に伝えられたものと聞いている」と話した。

北朝鮮に拘束された米国人女性記者の写真を掲げ、抗議する人々=6月4日、ソウル

クリントン国務相は20日、ABCテレビとのインタビューで「最も重要な目標は2人の記者が無事帰国、家族のところに戻ること」と強調した。これに先立ち、クリントン氏は「2人の記者と家族は今回の事件に対し、大きく後悔する姿を見せており、すべての人々が今回のことを非常に遺憾に思っている」とした上で「北朝鮮が赦免を通じ、善処してくれることを要請する」とコメントしたことがある。

「釈放」の代わりに「赦免」という言葉を使ったのは、北朝鮮の法システムを認めるというのを意味する。これによって、北朝鮮の要求3つのうち、2つ(法体系の認定と遺憾の表明)の整理は済み、平壌から記者を連れてくる特使の部分だけ残った状況となった。対北特使には当初ボスワース北朝鮮政策担当特別代表が有力視されていた。

しかし北朝鮮はボスワース氏が公開的に訪朝の意向を示したにもかかわらず、何の回答もしていない。続いて、カレントTVの共同設立者であるゴア元副大統領と、北朝鮮との交渉にあたった経験のあるリチャードソン・ニューメキシコ州知事が取りあげられたが、北朝鮮はこれも無視したまま、クリントン、カーター両氏に触れている。

北朝鮮に拘束された米国人女性記者の写真を掲げ抗議する人々=6月4日、ソウル

しかし米政府はこれを受け入れそうな雰囲気ではない。対北特使問題の奥深くには、朝米両国が、より優位に立ち交渉を進めようとする高度な政治的計算がある。北朝鮮の場合「記者の釈放問題」に「朝米間で続く対決の局面」を結び付けようとする本音が強い。釈放に向けた接触が「核保有と体制の保障などを含む朝米間の包括的交渉」のスタートになることを望んでいるのだ。

そのためにはオバマ政権で影響力を発揮できる大物であるほどよい。半面、米国は記者らを拘束した初期から、同問題を「人道レベルの懸案」と限定させ、政治・安保の懸案に結びつけるのを極度に警戒してきた。特に北朝鮮の核実験やミサイル発射による国連安全保障理事会の対北制裁が、国際社会の連携に支えられ順調に進みつつある状況で、特使派遣がこれを反転させる「状況変化」につながることを懸念している。

しかし、記者らを抑留する状況が続き、米国内の世論が悪化すれば、米政府としても負担となるほかない。だから朝米間の交渉が水面下で激化しつつあり、カート・キャンベル国務次官補(東アジ・太平洋担当)らオバマ米政権の主要当局者を特使に送るレベルで、双方が妥協することになるだろうという見方が出ている。

そりゃ手ぶら、丸腰で向かったわけではなく、これまでも水面下での様々な交渉が続けられ、その結果、見込みがつきつつあるから行動を起こしたことは容易に推測できますが、鮮やかですね。類似の問題をかかえながら6カ国協議で他国に頼り、定期的にマスコミを通じて世論の喚起は行うものの、何も具体的行動を起こせないどこかの国の政府としては、他国の出来事として知らぬ他人のふりをするしかないでしょう。

米国のクリントン元大統領が北朝鮮に拘束された米人女性ジャーナリスト2人の解放に向けて訪朝したことについて、政府は4日、注意深く事態の推移を見守る姿勢を示した。 河村建夫官房長官は4日午前の記者会見で「日本政府としてのコメントは差し控えたい」として事実関係の明言を避けた。また、クリントン氏が金正日総書記と会談する可能性に関しても「米国務省当局が何も情報はないと言っているので、現時点でコメントすることはない」と述べた。 一方、中曽根弘文外相も記者会見で「政府としてはコメントする立場にない。ただ、拘束されている米人ジャーナリストについては、事態の推移を高い関心を持って見守ってきた。早期に解決されることを望んでいる」と指摘した。

米政府当局者は、北朝鮮が米国記者釈放に事前に合意していたことを明らかに。写真は釈放された女性記者ら